相続が発生すると預金口座が凍結される?|住まいのお金FP相談室
「夫が亡くなったら、銀行口座のお金は自由に引き出せなくなるのでしょうか?」
相続の相談を受けていると、このようなご質問をいただくことがあります。
夫婦で長年一緒に生活し、協力して貯めてきたお金なのだから、配偶者であれば当然自由に使える、と多くの方は思っています。
しかし実際には、亡くなった方名義の預金口座は、金融機関が死亡の事実を確認すると凍結されることになります。
預金残高がなくなるわけではありませんが、相続手続きが完了するまでは自由に引き出すことができなくなるため、残されたご家族が思わぬ不便や不安を感じることもあります。
相続というと、「相続税がかかるかどうか?」という税金面を気にされる方が多いのですが、実際の相談現場では税金の支払いよりも先に困ることがあります。
それが「預金が引き出せない」という問題です。
今回は、なぜ預金口座が凍結されるのか、どのような場面で困ることが多いのか、そして残されたご家族が安心して生活できるようにするための対策について分かりやすく解説します。
なぜ預金口座は凍結されるのか
人が亡くなると、その方が所有していた財産は相続財産となり、預金も当然その中に含まれます。
例えば、ご主人名義の口座に1,000万円の預金があったとします。
奥様からすれば、夫婦で一緒に生活しながら貯めてきたお金ですから、自分が自由に使えるように思うかもしれません。
しかし法律上は違います。
亡くなった方の預金は相続人全員に関係する財産になります。
そのため、特定の相続人だけが勝手に引き出してしまうと、他の相続人との間でトラブルになる可能性があります。
配偶者が生活費として使用した後、他の相続人から「勝手に使われた」と指摘されたらどうでしょうか。
こうした争いを防ぐため、金融機関は死亡の事実を確認すると口座を凍結します。
つまり、相続人全員の権利を守るための措置なのです。
預金口座凍結で、実際に困るのはどんな人なのか
相続が発生すると、預金が十分にあっても、すぐにお金を引き出せず困ってしまうケースがあります。
以前ご相談を受けた70代の奥様は、ご主人を亡くされた後、預金口座の凍結によって大変な思いをされました。
ご主人は退職金や長年の貯蓄によって十分な資産を残されていました。
預金残高は2,000万円以上ありましたので、生活に困ることはないと思われていました。
ところが、ご主人名義の口座にお金が集中していたのです。
年金の受取口座もご主人名義。
公共料金の引き落とし口座もご主人名義。
日常生活で使うお金もすべてご主人名義の口座から出ていました。
ご主人が亡くなった後、銀行に連絡をしたことで口座は凍結されました。
その結果、「お金はあるのに使えない」という状況になってしまったのです。
葬儀費用の支払い、医療費の精算、当面の生活費など、まとまったお金が必要になるタイミングだっただけに、不安は大きかったそうです。
幸い、奥様自身の口座にもある程度の預金があったため乗り切ることができましたが、「まさかこんなことになるとは思わなかった」と話されていました。
子どもがいない夫婦は特に注意が必要
相続で特に注意したいのが、子どもがいないご夫婦です。
子どもがいる場合には、一般的に配偶者と子どもが相続人になります。
しかし子どもがいない場合には、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になることがあります。
さらに兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、その子どもである甥や姪が相続人になることもあります。
ここで問題になるのが人間関係です。
長年連絡を取っていない兄弟姉妹。
会ったことがほとんどない甥や姪。
遠方に住んでいる親族。
そうした方々にも相続手続きへの協力をお願いしなければならないことがあります。
実際にあったご相談では、ご主人が亡くなった後、奥様以外に複数の甥や姪が相続人となるケースがありました。
相続手続きを進めるためには、印鑑証明書や書類への署名が必要になります。
しかし、すぐに連絡が取れない方もいました。
結果として預金の払い戻し手続きが完了するまで、半年以上かかってしまいました。
相続税の心配はありませんでしたが、相続手続きの負担は非常に大きかったそうです。
必要書類を集めるだけでも大仕事
凍結された預金を引き出すためには、様々な書類が必要になります。
亡くなった方の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書、遺産分割協議書などです。
言葉にすると簡単ですが、実際にはかなりの手間がかかります。
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集めるだけでも複数の役所へ請求しなければならないことがあります。
相続人が複数いる場合には、それぞれから必要書類を集めなければなりません。
また、ようやく書類が揃ったと思ったら、有効期限が切れて取り直しになることもあります。
大切な家族を亡くした直後の精神的につらい時期に、こうした手続きを進めなければならないのです。
相続手続きが大変だと言われる理由は、単に法律が難しいからでは無く、必要書類を集めるのに相当な労力が必要だからです。
預金口座凍結で困るお金とは
預金口座が凍結されると、具体的にどのような場面でお金に困るのでしょうか。
最も多いのは葬儀費用です。
葬儀の内容にもよりますが、数十万円から百万円以上の費用がかかることもあります。
また、入院費や医療費の精算が残っている場合もあります。
さらに、固定資産税や自動車税、マンション管理費などの支払いが続くこともあります。
残された配偶者が年金を受給していても、当面の生活費が不足するケースは少なくありません。
預金があることと、すぐに使えるお金があることは別問題なのです。
FPが考える現実的な対策
では、どのような準備をしておけばよいのでしょうか。
まず大切なのは、生活資金を一人の名義だけに集中させないことです。
ご主人名義の口座だけで家計を管理しているのであれば、奥様名義の口座にも生活予備資金を確保しておくことをおすすめします。
また、葬儀費用や緊急予備資金として、すぐに使えるお金を準備しておくことも重要です。
子どもがいないご夫婦や相続関係が複雑になる可能性があるご家庭では、遺言書の作成も有効な対策になります。
さらに近年は家族信託を活用するケースも増えており、認知症対策として利用されることが多い制度ですが、財産管理の面でも有効です。
そして、特に効果的だと考えられる対策が生命保険の活用です。
生命保険金は受取人固有の財産として受け取ることができるため、預金のように相続手続きが終わるまで使えない、という状況を避けやすくなります。
残されたご家族の生活費や葬儀費用を確保する手段として、生命保険は非常に有効な対策なのです。
まとめ
預金口座の凍結は、誰にでも起こり得る相続手続きの一つです。
しかし、その仕組みを知らないまま相続を迎えると、
「預金はあるのに使えない」
という状況に戸惑うことがあります。
特に高齢のご夫婦や子どもがいないご夫婦の場合には、事前の準備によって将来の負担を大きく減らすことができます。
相続対策で本当に大切なのは、より多くの財産を残すことだけではなく、残された家族が安心して生活を続けられる環境を整えておくことです。
もし、ご自身のご家庭ではどのような対策が必要なのか分からない場合には、元気なうちに専門家へ相談してみてはいかがでしょうか。
将来の不安を減らし、家族に余計な負担を残さないことも、大切な相続対策の一つなのです。
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幼少の頃2DKの公団住宅に住んでいたため、マイホームへ強い憧れを持っていました。しかし、初めての住宅購入では失敗・・・その経験から住宅購入者が失敗を未然に防ぎ、満足のいく家づくりのお手伝いをしています。
メディア掲載実績
全国のFPが会員登録している日本FP協会様より、実務家FPとして取材を受けました。
「シンヴィング」様より住宅購入相談FPとして取材を受けました。(クリックで拡大します)
工務店さん向けに「工務店が知っておくべき資金計画」の研修講師を行いました。
ニューファミリー新聞社様にて、著書「生命保険見直し成功マニュアル」が紹介されました。













