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家は選べても隣人は選べない

住宅購入の相談を受けていると、お客様は住宅会社選びや住宅ローンについて本当によく勉強されています。

 

住宅会社を比較し、断熱性能や耐震性能を調べ、設備や間取りについて何度も打ち合わせを重ね、後悔しないよう慎重に検討されています。

 

もちろんそれはとても大切なことですし、人生で最も高額な買い物の一つですから、失敗したくないと思うのは当然でしょう。

 

しかし、その一方で、多くの方があまり気にしていないことがあります。

 

それは「近所にどんな人が住んでいるのか?」ということです。

 

家はリフォームできます。

設備も交換できます。

住宅ローンも借り換えられます。

 

ですが、顔を合わせる頻度が高い近所の人だけは、自分の意思では選ぶことができません。

 

先日、そのことを改めて考えさせられる出来事がありました。

 

仕事で某市の公共施設へ行ったときのことです。

 

受付には数名が並び、スタッフの方が一人ひとり丁寧に対応していました。

 

すると、70代くらいの男性が受付へやってきました。

 

どうやら何かの申し込み方法が分からなかったようです。

 

分からないことを質問すること自体は悪いことではありません。

 

私も分からなければ聞きますし、誰でも初めて利用する施設であれば戸惑うことはあります。

 

しかし、その男性は受付へ行くなり、かなり高圧的な口調で話し始めました。

 

「何でこんな分かりにくいんだ。」

「もっとちゃんと説明しろ。」

「普通はもっと分かりやすく書くだろ。」

 

スタッフの方は終始笑顔で対応し、一つひとつ丁寧に説明しています。

 

それでも男性は説明を聞くというより、自分の不満をぶつけ続けていました。

 

受付周辺は何とも言えない空気になり、周囲で待っていた人たちも視線をそらしています。

 

スタッフは何も悪くありません。決められたルールを説明しているだけです。

 

それにもかかわらず、自分がお客だからという理由で強い態度を取り、相手へ圧力をかける。

 

本人は当然の権利だと思っているのかもしれませんが、周囲から見ると決して気持ちの良いものではありませんでした。

 

その数日後、別の公共施設でも印象的な出来事がありました。

 

今度は60代くらいの男性です。

 

こちらは怒鳴ることもなく、一見すると穏やかそうな方でした。

 

しかし、近くにいた利用者へ向かって延々と自分の考えを訴え続けていました。

 

「常識ではこうするものだろ。」

「最近の人は常識がない。」

「昔はみんなもっと常識があった。」

 

常識という言葉を何度も繰り返しています。

 

話を聞いている相手は困ったような顔で、自分から話しかけている様子ではありません。

 

完全に一方通行の会話です。

 

本人は「人生経験のある自分が常識を教えてあげている」という感覚なのかもしれません。

 

しかし、その「常識」は本当に世間の常識でしょうか。

 

赤の他人に対し偉そうに自分の「常識」を押し付けている時点で、常識がある人とは言えないのではないでしょうか。

 

時代は変わります。

価値観も変わります。

昔の当たり前が、今も当たり前とは限りません。

 

それなのに、自分の常識だけを正解として他人へ押し付けてしまう人は少なくありません。

 

もちろん、これは年齢の問題では無く、若い世代にも同じような人はいます。

 

一方で、70代や80代でも気遣いのできる素敵な方もたくさんいらっしゃいます。

 

今回お伝えしたいのは、高齢者が悪いという話ではなく、「自分だけが正しいと思い込み、周囲への配慮を忘れてしまう人」がいるということです。

 

そして、そのような人ほど、自分では気付いていないことが多いのです。

 

公共施設で数分一緒になるだけなら我慢できます。

 

「今日は運が悪かったな」と思えば済みます。

 

しかし、その人が自分の隣の家に住んでいたらどうでしょうか。

 

ゴミ出しの時間を細かく注意される。

庭木が少し伸びただけで文句を言われる。

子どもの遊ぶ声に苦情を言われる。

 

休日に庭で家族と過ごしているだけで、「最近の人は常識がない」と言われる。

 

そんな生活が何年も続いたら、自宅は安らげる場所ではなくなってしまいます。

 

実際、住宅購入後に相談に見えたお客様の中には、

 

「家には満足していますが、近所付き合いだけは失敗したので、できるのであれば住み替えたい」

 

という悲痛な声を耳にすることがあります。

 

住宅ローンよりも、設備よりも、人間関係のストレスの方が生活への影響は大きい場合もあります。

 

さらに考えさせられるのは、このような人が目立つ地域は、新しく住みたいと思う人が減ってしまう可能性があることです。

 

もちろん、街が衰退する原因は人口減少や少子高齢化、雇用環境など様々な要因があります。

 

しかし、

 

「あの地域は近所付き合いが面倒そう」

「昔から住んでいる人が排他的らしい」

「何かあるとすぐ文句を言われる」

 

といった評判が広がれば、若い世代や子育て世帯はその地域を避けるようになるかもしれません。

 

人が集まらなければ空き家は増えます。

新しい住宅も建ちにくくなります。

商店街も活気を失います。

新しいお店も出店しにくくなります。

企業も投資を控えるようになります。

 

再開発を進めようとしても、「この地域に住みたい」という人が増えなければ、大きな開発は進みにくくなるでしょう。

 

一人の行動だけで街が衰退するわけではありませんが、自分の価値観を他人へ押し付けたり、高圧的な態度を取ったりする人が多い地域は、「住みやすい街」と評価されにくくなる可能性があります。

 

反対に、挨拶が自然に交わされ、お互いを思いやる雰囲気がある地域は、住みたい街として選ばれやすくなります。

 

住宅の資産価値は建物だけではありません。

 

「この街に住みたい」と思われることも、大切な価値の一つです。

 

だからこそ、住宅購入では価格や建物だけを見るのではなく、「どんな街なのか」「どんな雰囲気なのか」「近隣環境はどうなのか」という視点も持っていただきたいと思います。

 

最近では、土地や住宅を購入する前に、近隣環境を調査してくれるサービスもあります。

 

近隣の生活環境や周辺の雰囲気、騒音、地域の特徴などを客観的に調査し、住み始めてから「こんなはずではなかった」と後悔するリスクを減らすためのサービスです。

 

もちろん、「あの人は良い人」「あの人は悪い人」と個人を評価するものではありません。

 

しかし、自分だけでは分からない地域の特徴を知ることができるため、不安がある方にとっては有効な選択肢の一つになるでしょう。

 

私はFPとして住宅購入のお手伝いをしていますが、お客様には住宅ローンや資金計画だけでなく、「そこで何十年も安心して暮らせるか」という視点も大切にしていただきたいと考えています。

 

住宅は何千万円という買い物です。

 

だからこそ、建物や価格だけではなく、その街の空気、人との距離感、近隣環境まで含めて検討することが、後悔しない住宅購入につながります。

 

家は選べます。

住宅会社も選べます。

住宅ローンも選べます。

しかし、近所の人だけは選ぶことができません。

 

だからこそ、土地を購入する前には、建物の構造を見る目と同じくらい、「街を見る目」「住環境を見る目」を持つことをおすすめします。

 

それが、何十年先まで「この家を買って良かった」と思える住まいづくりにつながるのではないでしょうか。

 

家は選べても隣人は選べない|住まいのお金FP相談室

住宅購入で後悔しないためには、建物や住宅ローンだけでなく、安心して暮らせる住環境まで考えることが大切です。

 

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